,
EOS津野の
電子光学講座
コンタクト eostsuno@yahoo.co.jp |
エネルギー分析の方法は沢山あります。1998年に日刊工業新聞社より発行された「電子・イオン
ビームハンドブック(学振132委員会・裏克己先生)のエネルギー分析の項目は私が書きましたが、
その411ページに電子のエネルギー分析の方法を表にまとめてあります。この表に書かれていない
新しい方法が発明された様にも思われませんので、分類としては今でも有効だろうと思って
います。その分類によれば、エネルギー分析の方法は大きく3つに分けられます。飛行時間法
(TOF)、半透明ミラー法、分散法です。飛行時間法は、試料から検出器までに電子が飛んで行く
時間を測定するもの、半透明ミラーは、電圧をかけたグリッドやアパーチャーを設けて電子が
そこを通り抜けたり、跳ね返されたりすることでエネルギーの上限と下限を設定する方法
です。同じことを磁場を使ってやることも出来ます。もう一つの、大部分の分析法を担って
いるのが分散法で電子を電場や磁場の力で偏向し、検出位置の違いとして
読み取るものです。電場による放物線軌道を利用するミラー型と電場、磁場、それらの
重畳したウィーン型を使って円運動または直進運動を行わせるプリズム法があります。 |
|
エネルギー分析装置の分類
電子ビーム装置におけるエネルギーフィルタの利用は透過型電子
顕微鏡(TEM/STEM)用と表面分析用(XPS/PEEM)の2種類に大別されます。
前者には主として磁場型のエネルギーフィルタが用いられ、
後者には静電分析装置が使われています。もう一つ大きな特徴として、
取得される画像とスペクトルのうちTEM/STEMでは像が重視され、
XPS/PEEMではスペクトルがより重視される傾向にあることです。
もう一つ特殊な使い方として、電子ビームテスターとして電子回路
の電圧測定に用いられた走査型電子顕微鏡(SEM)用のフィルタがある。
電子ビームテスターとしての利用は最近なくなったが、SEM像の
コントラストに対する二次電子の放出角度とエネルギーの関係に
ついての関心が高まり、色々なフィルタが提案されている。
表Iにエネルギーフィルタをその動作原理に従って分類した
ものを示す。現在はミラー法が廃れ、分散を作る偏向法の中
でもプリズム法が大部分を占めるようになった。これは、
動作原理が簡単でシミュレーションも比較的容易である
ことがその理由ではないかと考えられる。プリズムには
静電プリズム、磁場プリズムの他、電場・磁場重畳による
ウィーンフィルタもある。ウィーンフィルタは電場による
偏向と磁場による偏向を特定のエネルギーに対して
キャンセルし、両者の偏向量の差からエネルギーの
違いを調べる装置で、ビームが直進することから電子顕微鏡
とは相性が良く、電子源のエネルギー幅を制限するための
モノクロメータとしての利用が進んでいる。
表I. エネルギーアナライザは飛行時間(TOF)、半透明ミラー、分散法の
3種類に分類されます。
表II. エネルギーアナライザの大部分を占めるプリズム法は電場、
磁場及び両者で偏向をキャンセルしてほぼ直線の軌道を実現したWien
フィルタ法の3手法があります。
|
|