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電子光学講座
偏向器と非点補正器はほとんどどの電子光学機器に組み込まれていますが、詳しい解析もされず、 見よう見まねで作られて来たのではないでしょうか。複雑な装置にしろ、単純なレンズ系だけの 装置にしろ、軸合わせをし、ビームを出すことが最初の大事な仕事になります。このとき光学系 の調整作業の大部分は偏向器の調整に費やされると言っても過言ではありません。それだけ装置 の成功の第一関門になる部品が軽視されていたと言えそうです。もうひとつ、偏向系、非点補正 系の設計で大事なことはその製作コストです。メインの光学機器ではなく、補助的な役割を担っ ている部品だけにそのコストを忘れがちですが、とくに静電偏向器の場合には、電源の数が問題 になります。電源安定度に高い要求があるにもかかわらず、電源の数が意外に多いために、コス ト的にまかないきれなくなってしまっているケースに何度も出会いました。ここでは、そのこと も考えながらどんな偏向器と非点補正器があるかを見ていきます。


偏向器と非点補正器

電子ビームの偏向は、エネルギーアナライザなどで使われる一様磁場による電子ビームの偏向と基本的には 同じです。つまり、ローレンツ方程式と、ニュートンの運動方程式によって記述されます。
(d/dt)mv = -e(E + v X B)
で表されるのです。エネルギーアナライザの場合と異なるのは、偏向器の場合はその厚さが短いため、円運 動というよりは、角度変化で記述した方が便利になるということです。この様子を図1に示してあります。R はおなじみのサイクロトロン半径で、
R = mvo / eB = root[(2m/e) Vr] / 8
となります。角度で表現し直しますと、
θ = L/R = LBe/mvo = LB* root(2m/e)Vr]
となります。ここで、Vrは電子ビームの加速電圧です。

偏向器には磁場型と静電型があります。どちらの偏向器を使うかは主に装置の真空度によります。 超高真空、極高真空装置では静電偏向器が一般的ですが、コイルを真空中に入れても構わない程度の真空 で使われる場合は磁場型が一般的です。装置で言うと、表面分析装置では静電型が一般的で、SEMやTEM などの電子顕微鏡では磁場型が一般的です。

図2には磁場型の代表的な二つの偏向器の模式図を示します。トロイダルコイルとサドルコイルです。図 3には、静電型の代表的な8極型偏向器を示します。 実は、本などの解説には指摘されていないことですが、磁場型と静電型の最も大きな違いは電源の数です。 静電型では電極に電圧を印加しますが、このときプラスの電極とマイナスの電極に与える電圧の絶対値が 同じにも拘わらず、プラス電極とマイナス電極のそれぞれに別の電源を使う必要があります。これに対し て、磁場型では、コイルを逆向きにつなげばよいので、二つの極に一個の電源で済みます。また磁場型は 、図2のサドル型からわかるように、XとYの両方向を同じ場所に重ねて設置できるのですが、電場を作る 電極は重ねておくことができないため、同じ位置にX偏向器とY偏向器を重ねて置こうとすると、図3に見 られるように電極の数を増やして対処せざるを得ず、結局、電源数増大の原因を作ってしまいます。

以下では、両方の偏向器を詳しく見ていきますが、どの方式では電源数が何個必要かに関心を持って 眺めていただければと思います。偏向器の電源は、直接に装置の安定度を支配し、これによって装置の 分解能が左右されてしまうことから、安定度の高いものが要求されるため、装置全体のコストに直接的に 影響します。偏向器は、多くの装置にとって脇役でありながら、コスト的には主役になってしまう 場合もあるのです。


図1. 一様磁場による電子ビームの偏向
図2. 磁場型偏向コイル
図3. 8極静電偏向器
            
電場偏向器
電極数電源数形状
.4極
4x2
4x2 .
.8極
8x2
8x2 .
12極子
12x2
4x2
20極子
20x2
4x2
    
電場非点補正子
電極数電源数形状
8極
8x2
Defと共用0
8極
Crewe*2
8
     
磁場偏向子
電極数電源数形状
鞍型
2x2
2
トロイダル2
     
磁場非点補正子
電極数電源数形状
45°
2x2
2
8極
金谷*1
2
2-coilx2
Liecke*3
2
*1: K. Kanaya, Reminiscences of the Developement of Electron Optics and Electron Microscope Instrumentation in Japan, Advances in Electronics and Electron Pgysics, Supplement 16, "The Beginning of Electron Microscopy, ed. by P. Hawkes, 1985"
*2: A. V. Crewe, High Intensity Electron Sources and Scanning Electron Microscopy, in Electron Microscopy in material science, ed. U. Valdre, Academic Press 1971.
*3: W. D. Riecke, Practical Lens Design, in Magnetic Electron Lenses, ed. PW Hawkes, Springer-Verlag, 1982.

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