カテゴリ一覧

EOS津野の事業
.EOS津野の事業内容と価格

いろいろのレンズ
.透過電子顕微鏡用レンズの開発
.透過電子顕微鏡用レンズ
.SEM用対物レンズ
.SEM用電場・磁場重畳対物レンズ(準備中)
.LEEM/PEEM用対物レンズ(準備中)
.静電レンズのいろいろ(準備中)

偏向系とスティグメータ
静電偏向器
.4極子と一様電場生成条件
.8子による一様場の生成
.12極と20極偏向子
静電非点補正器
.8極スティグメータ


収差補正のいろいろな方法
電子レンズの球面収差と色収差
シェルツァーの前提
第1章・4-8極子による球面収差Cs補正
第2章・4極子による色収差Cc補正
..2.1・電場・磁場4極子による色収差Cc補正
..2.2・リターディング法電場4極子による色収差Cc補正
<第3章・Wien Correctorによる球面収差Cs色収差Cc補正
第4章・Hexapoleによる球面収差Cs補正
第5章・Mirrorによる球面収差Cs、色収差Cc補正

いろいろの「ウィーンフィルタ」
.一様電場・磁場の生成とWien条件 I
.一様電場・磁場の生成とWien条件 II
.4極場の導入による非点無結像
.多極子フィルターの作る電場と磁場の分布
.多極子ウィーン・フィルターの電子軌道

Wien Filterの設計法とその応用
第1章・Wien Filterの設計と電場・磁場の計算
  ・ 第2章・Wien Filterの電極・磁極の形と電子の軌道
  ・ 第3章・いろいろなWien Filter
  ・ 第4章・Wien Filterの応用I・スピン回転器

エネルギーアナライザ
. 半透明ミラー
. 静電エネルギーアナライザCDA127
. 半球アナライザSDA180(HDA)

電子顕微鏡のハードウェア
.電子銃と照射レンズ
.偏向・補正系と結像レンズ
.像の記録と分析電子顕微鏡

著者のページ

EOSTのホームページにようこそ
--12極子、20極子による一様場の生成 --

EOS津野
電子光学講座
8極場では同一面内にXとY方向の偏向場を作ることができましたが、二段偏向で16個もの電源を 必要としました。これを何とかしようと多分考えられたのが12極子、20極子による偏向で、 今度は電圧変化によってではなく、電極の形状によって電場の均一条件を見つけています。 電圧変化ではなく、形状によることから、極の数も増えてしまっているわけです。今度は 電源数の増大によるコストアップではなく、複雑な形状を精度良く作るためのコストの検討 が必要かもしれませんが、8極と12極でそれほどコストも違わないと言うことができれば、 有利な方法といえましょう。これらの工夫は、残念ながら、電子顕微鏡や、表面分析装置の 分野で見つけ出されたものではなく、多分、今は市場から消えてしまったCRTなどのディスプレイ の研究から生まれてきた技術のようです。


12極子と20極子を使った静電偏向器

図1に示すように、上下左右に50°の角度の大きな極を置き、4つの斜め方向に20°の広 がりを持った極を2枚ずつ配置するという12極子の構造をどのようなきっかけで思いつい たのか私は知らないのですが、良く考えたなと感心した配置です。図には、-X, X, Y, -Y で記していますが、4種類の電圧をかけます。20°の電極は一個間を置いてから同じ電圧が かかります。一様場を作るには、120°の広がりが必要でしたが、この場合は130°の広が りを持っています。ただ、間が抜けているわけです。間を抜くことによって、8極子の場合 のような電圧を下げるのと同じ効果が生まれているのだと思います。別の電圧を加えるには 別の電源が必要ですが、間をあけるだけで同じ電圧をくわえるならば余分の電源はいらない わけです。

図2にはX=10V, Y=10Vを加えた場合のポテンシャルを示しています。-X, -Yにはもちろん -10Vをかけているわけです。このとき、ポテンシャルは両方向の合成で45°の方向を向い ています。

図3は20極もありますが、12極の場合と何が違うかといいますと、最初のページに書いた式 で、偏向子の条件は、3次の項が〇になることでしたが、この20極子はさらに次の5次項も零 になるように選ばれているということです。高次の項まで零になっている場合の利点は、遠 くまで、つまり大きな量の偏向に耐えられる偏向子ができるということになります。偏向器 は電子顕微鏡で使われているように、補正やスキャンのほかに、リソグラフィー装置のように 大きな偏向を必要とする場合もあります。しかし、この20極子のような複雑な形になると、 その形を精度よく加工し固定する際の誤差の方が大きく聞いてしまうのではないかと心配に なります。

図4は、8極偏向子の偏向軌道を描いたもので、偏向後ビームがフォーカスするように入射 ビームの条件を与えたものです。このとき、フォーカスビームの周辺のビーム形状すなわち 収差図形を描かせてみますと、図5のようになりました。収差の大部分は非点であることが わかります。Z=15mmちょうどの位置でのビームサイズは5nmx45nmで、非点がなければビーム サイズは5nm程度であることがわかります。偏向量は、高々0.1mm程度ですが、この程度の 僅かの偏向量のときには、5次の収差を気にするよりも、非点がどこから出てしまっている のかを追及する方が重要と思われます。 前に4極子の場合の電場ポテンシャルで二個の4極子を近づけておいたときに、その境界で 4極子場を発生していましたが、おそらくはこれが非点を作ったのではないかと推定されます。 もしそうであれば、2段偏向において、2個の多極子はお互いに遠ざけて設置しなければな りません。12極子を20極子に変えて5次の収差を防ぐことよりも先にやるべきことはこの 偏向に伴って発生する非点を防ぐことではないかと考えられます。
図4. 二段偏向ビーム
図5. 偏向ビームのフォーカス点近傍の収差図形
図1.静電12極
図2. 静電12極子のポテンシャル。X,Y方向に同一電圧を加えた場合。
図3. 静電20極子のポテンシャル。X,Y方向に同一電圧を加えた場合。


偏向器と非点補正器のトップに戻る
            
電場偏向器
電極数電源数形状
4極
4x2
4x2
8極
8x2
8x2
12極子
12x2
4x2
20極子
20x2
4x2
    
電場非点補正子
電極数電源数形状
8極
8x2
Defと共用0
8極
Crewe*2
8
     
磁場偏向子
電極数電源数形状
鞍型
2x2
2
トロイダル2
     
磁場非点補正子
電極数電源数形状
45°
2x2
2
8極
金谷*1
2
2-coilx2
Liecke*3
2
*1: K. Kanaya, Reminiscences of the Developement of Electron Optics and Electron Microscope Instrumentation in Japan, Advances in Electronics and Electron Pgysics, Supplement 16, "The Beginning of Electron Microscopy, ed. by P. Hawkes, 1985"
*2: A. V. Crewe, High Intensity Electron Sources and Scanning Electron Microscopy, in Electron Microscopy in material science, ed. U. Valdre, Academic Press 1971.
*3: W. D. Riecke, Practical Lens Design, in Magnetic Electron Lenses, ed. PW Hawkes, Springer-Verlag, 1982.

最初のページに戻る

コンタクト・質問は、こちらまで♪EOS津野"tsuno6@hotmail.com"
著者のページ