Wien Filterのシミュレーション
.Wien Filter 開発の歴史
  製作のテクニック
.1. Andersen型二段コイルによる一様磁場
.2. トロイダルコイルによる一様磁場
.3. 多極子空芯コイルによる一様磁場 その1
.4. 多極子サドルコイルによる一様磁場 その2 鉄のミラープレート付
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トロイダルコイルは電子顕微鏡の分野では偏向器と非点補正器としてなじみ深いものでした。 しかし、ほとんどがフェライトやパーマロイなどの磁性体のリングにコイルを巻きつけて使い、 磁場はコイルの内側ではなく、円の内側にき噴出させて使われていました。今日御紹介するのは 空芯でコイルで囲まれた領域に電極を入れ、ここに電子を通します。コイルはリングの周りに 巻きつけてあるので、直線的に変化する4極場も発生します。この方法はコンパクトなフィルタが 出来るということがメリットでしょうか。

トロイダルコイルによる一様場と4極場の生成

図1に二つのトロイダルコイルを使ったウィーンフィルタの例を示します。左側は Galejs と Kuyattの論文、右側は PageとReadの論文と同様の構成にしてあります。トロイダルコイルを特にGalejsとKuyattのようにリングの 全面に巻く必要はなさそうです。PageとReadの論文にあるように、コイルは一部だけにしても同じ磁場の分布が 得られるようです。電子は、図1の右側の図で、二枚の電極版の間を通って上から下に向かって進みます。左から 右に進むわけではありませんので注意してください。電子の通路にコイルがかかるといけませんので、電子の通路に 当たるところでは、コイルを一本だけ省いてあります。PageとReadの論文でもちゃんとコイルに隙間が明けて描い てあります。

図2には磁場分布を計算した後のポテンシャルの等高線が示してあります。図1の上から見た時の等高線が左の図、 右の図はこれを横から見た場合です。電子は、上下方向に通ります。X, Y方向の磁場の強さBx, Byは、

Bx = BoRoy/{(Ro - x) + y2}
B1=By = BoRo(Ro - x) / {(Ro - x) + y2}

とあらわされます。ここで、Roは、サイクロトロン半径で、加速電圧Uoと、一様電場E1を使って

Ro = 4Uo / E1

とあらわされます。フォーカスを作るために必要なフィルタの長さLは、

L / Ro = π / √(2)

となります。電場の強さE1はウィーン条件E1=vB1 (vは電子の速度) から求められます。与えられた 加速電圧Uoの下で、ちょうど良いフィルタの長さLとトロイダルコイルの半径を求めるのは案外難しい かもしれません。図3は、磁場の分布を示しています。左の図が電子の進む方向Zに沿った分布で、 端の方で少し磁場が高くなり、中心で低くなっているのは、たまたま入り口付近にコイルがあったためで、 コイルの数を倍にすると逆になったりします。実際に実験するときはコイルはびっしりと巻きますので、 この分布は一様になると思われます。右の図はビームの進行方向に垂直な面内での磁場分布で、X方向には 傾斜した磁場が出来ています。この傾斜成分によって、非点なしフォーカスが実現できるわけですが、 この傾斜成分は、トロイダルコイルの巻枠の円の半径によって決まりますので、実験の際には変更できません。 Y方向の分布には、傾斜成分は含まれませんので、磁場の均一性を見てみますと、1%の変化が、1.4mm程度で 起こっていますので、必ずしも均一性は高くありません。

このように、実際にシミュレーションをやってみると、このトロイダルコイル方式がそれほど魅力的な ウィーンフィルタの一様磁場と、傾斜磁場の生成方法ではないことがわかります。

なお、PageとReadの論文では、このタイプのほかに、コイルをトロイダル型ではなく、直線状の ソレノイドコイルにして、電極の方を円筒型電極にすることによって、B2ではなくE2を作る方式も紹介されて います。ソレノイドコイル、あるいは電子ビームを通すところにはコイルに隙間を開けなければなりませんので ヘルムホルツコイルといった方が良いかもしれません、コイルは一様場を作るために使い、4極場は円筒電極に よって与える方法もあるわけです。

最後に、ヘルムホルツコイルを使った例として 私の計算 の図をご紹介します。左側 の図で端に4つ光っているのがヘルムホルツコイルです。丸は、真空チャンパを示しています。 コイルは、真空外に設置できるのが、空芯コイル使用の一つのメリットでした。中心にある二本の棒が 電極です。右の図は、中心でフォーカスするように入れてやった電子ビームの図です。この場合は、 E2もB2も入れていません。

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図1. トロイダルコイル柱に電極を入れた二つの例。
図2. 図1の左側のトロイダルのポテンシャル分布。

図3. 軸上磁場分布。左:Z 右上:X, 右下:Y。X方向分布には直線成分、4極子成分が含まれている。 Y方向成分は1%あたりの分布を示しているが、1.4mmで1%の不均一が出ており、必ずしも 均一度は高いとは言えない。
図4. ヘルムホルツコイルを使ったWien Filterをスピン回転器として使った場合の例。
作成日 2012/03/21

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