Wien Filterのシミュレーション
.Wien Filter 開発の歴史
  製作のテクニック
.1. Andersen型二段コイルによる一様磁場
.2. トロイダルコイルによる一様磁場
.3. 多極子空芯コイルによる一様磁場 その1
.4. 多極子サドルコイルによる一様磁場 その2 鉄のミラープレート付
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 Wienフィルタをいざ制作しようとした時、まず困難にぶつかるのが、磁場の中に電場を組み込むことの 難しさです。電子線のエネルギーアナライザや、磁場型Massなどの電磁石を見てみますと、たいていの 電磁石はそのN極とS極の間のギャップがせいぜい10mm程度の狭い空間になっています。セクター磁石と 呼ばれている扇形をしています。磁場の均一性は、ギャップに対する磁極面の幅の広さでまずは決まります。 この比を最低でも3.5位にとるのが均一性の良い磁場分布を得るのに必要と考えられています。
 ところが、ウィーンフィルタでは、電場の均一性も必要ですから、電極間隙に対する電極の高さも同様に 高いことが必要です。電極の高さはすなわち磁極間隙の広さでもありますから、電場の一様性を高め ようとすれば、磁極間隙が広くなり、磁場の均一性が失われます。この矛盾を解決したのが、磁場としては 鉄心を用いずコイルだけで作るという方法です。これは1960~70年代に多く研究され、2000年代に入って リバイバルでいくつか提案されました。ここでは、コイルによるWien Filterの磁場生成に先鞭をつけた Andersenによる方法をシミュレーションによって試してみます。


Andersen型の二段式コイルによる
一様磁場の生成

図1がAndersen型の二段コイルとシム付 の金属製電極を組み合わせたウィーンフィルタのシミュレーション用の メッシュから3Dの図を作ったものです。この図では電極が上下方向を向いており、磁場は前後の方向に 発生します。両端にあるのは、電場のフリンジの分布を調整するシャントになりますが、アンデルセンの 文献では、さらに別の極がつながって、電場レンズを構成しているようです。磁場をコイルだけで作りますから そのフリンジでの分布と、電極で作る電場のフリンジでの分布がどうしても異なりますので、フリンジ部分での ウィーン条件の不成立が問題になると思われますが、その点については、ようやく2000年に入ってから詳しい 分析が試みられています。1960年代ではまずは一様電場を作れる電極対を収納できる広い空間を持った磁場 発生装置の研究が行われたわけです。

Andersenによると、図2に示すように同心円状にコイルを配置します。ただ、一個のコイルは図1に3Dで全体の 配置を示してあるようにサドル型のコイルになっています。すなわち、円弧の縁に沿って矩形のコイルがある わけです。一組のコイルi1の内側にもう一組のコイルi2が配置されています。軸に近い方のコイルi1は軸から 18°の方向にあり、i2コイルは軸から54°の角度に設置されます。アンデルセンの論文によれば、磁場 は次のような式で置かれます。

Hz(y) = k1 + k3y^2/R^3 + k7y^6/R^7 + ……,

ここで、係数k3は次のようにあらわされます。

k3 = 4{i1Cos(3x18°) + i2Cos(3x54°)}

y^3の項をなくす即ちk3=0の条件は、i1 / i2 = 0.62の場合だということです。この式の通りですと、軸に近い 方のコイルの電流i1よりも軸から離れた方のコイル電流i2の方を強くするということですが、図3に示します ように、シミュレーションの結果は逆でi2の電流の方をi1よりも弱くした時に一様場が得られるようです。 図3では、i2/i1=0.77の時に一様に近い分布が得られています。その両側では素直な二次曲線の分布が その符号を反転して見られます。このように二次曲線が素直に反転する例はむしろ少なく、たいていの場合は、 5次の項が三次の項が零になる付近で目立ってきます。そのため、このサドルコイルによる一様場生成 方は、一様場の作り方としては非常に優れた方法であると評価することが出来ます。図4は、横軸にi2/i1を とり、縦軸に磁場分布の二次曲線の係数を示したものです。i2/i1=0.75付近で一様場が得られることがわか ります。

ウィーンフィルタとしての性能を調べるためにはさらに電場の分布を調べ、両者のフリンジ部での分布の 違いを調べた上で、電子の軌道計算を行い、ウィーン条件がどの程度満足されているかなどをシミュレーション した上で全体的な評価となるわけですが、ここではいろいろなウィーンフィルタのコンペティションを行って いるわけではなく、まずは一様磁場、一様電場を作る方法をご紹介しているわけです。アンデルセンの 論文にある電場生成の方法は特に紹介の価値ある方法とも思えませんので、別の一様磁場生成法の検討に 移ることにします。

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作成日 2012/03/21

図1. Andersen型の二段コイルとシム付電極。
図2. 二段コイルの構造とポテンシャル分布。

図3. 二つのコイルに流す電流の比を変えた時の軸上磁場分布の変化。
図4. 二つのコイルに流す電流の比に対する磁場均一度の影響。