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<第3章・Wien Correctorによる球面収差Cs色収差Cc補正
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実際にウィーンフィルタを作ろうと考えたときに、どんな形のものを作ったら良いかは 迷うところです。制限条件になることは、リターディングと言って、ウィーンフィルタを高電圧の 下に置く使い方をするか、超高真空、極高真空下で使うか、と言うことです。Wien Filterは光軸が 直線で構造が単純なため、簡単な用途とともに、他の困難な要素の組み合わせと言うことで、 最も難しい用途にも多く用いられるようです。ここではたまたまこの数年間に設計したことのある 4つのウィーンフィルタを比較してみます。

第3章・Wien Filterの比較




Wienフィルターの比較。
ここでは上に示した4個のWien Filterについて、磁場や電場の分布を比較して見ます。 左から見てみますと、Aは、磁場を普通の平行な磁極面を持つ電磁石で作ります。その電磁石の ギャップの中に電極を入れますが、このときの電極を並行平板電極で作れない理由は、電磁石の ギャップによる電極の高さの制限です。

いま、第二章で見たように、フリンジでの電場と磁場の分布が違うとウィーン条件がその部分で 満たされなくなるため、ビームが曲がってしまいます。これを避けるためには、電極と磁極の 形が同じことが理想ですが、少なくともギャップ長は等しくしたいと言うのが暗黙の前提に なっています。

電極間距離(Se)を磁極間隙長(Sm)に等しくすると、電極の高さ(He)がSeとほとんど同じ長さ になってしまいます。これでは電場の一様性が確保されません。Wien Filterを構成するのは、 一様磁場と一様電場です。場の一様性が崩れると通過する電子ビームにどのような影響がある かといいますと、大きな二次収差を発生します。二次収差が出ると、ビームは三角形に歪みます。

並行平板電極がだめだとすると、一様電場を狭い磁極間隙の中で作るにはどうすれば良い でしょうか。この答えは、実は電子顕微鏡の装置構成の中にありました。そうです。偏向 コイルです。ビームを振るために使う偏向コイル、あるいは電場の偏向子は、狭い電子レンズの 中にあって一様電場、一様磁場を作っていました。Wien Filter Aの電極は、電場偏向子のまね をしたものです。 Wien Filter Bは、その改良版なのですが、その説明をする前に、Wien Filter Dの説明をした 方がわかりやすいと思います。Dは、12極子です。12極子がダイポール(2極子)、Quadrupole (4極子)、Hexapole(6極子)、Octopole(8極子)のいずれの成分も作ることが出来るということ については、収差補正のところで詳しく説明しましたので、ご存知のことと思います。この12 極子を使った方法は、直交する一様電場・磁場の作り方としては最も良い方法なのですが、 実際に作る場合の困難さと言いますか、費用は大きくなります。

Wien Filter Bは作成の困難さを回避して、12極子利用の利点だけを教授すべく考えられたも のです。磁場については一様磁場を作るのに、普通の電磁石を使うことに問題はないわけです。 問題は電場だけです。12極子で一様電場を作るときには、左の4極と右の4極に電圧を加え、 上下の2極づつは、アース電位にしておきました。そこで、Bでは円周上ではこれと同じことを 実現したわけです。Aの場合は、左右の電極は60°でしたが、bでは、電極は55°、間に10° のギャップを入れて、上下に25°の幅を持つ電極を追加しています。

Wien Filter Cは、ただ一つだけ、磁極間隙長と電極間距離が等しいと言う制約をはずした 場合です。磁場を空芯コイルで作りましたので、そもそも時極間距離と言う概念がありません。 このような場合、フリンジでどんな不都合が起こるのかを見てみましょう。
Magnetic Field of Wien Filter A
Magnetic Field of Wien Filter A
Electric Field of Wien Filter A
Electric Field of Wien Filter A
Aの場合はSb=Se=7mmでした。 XY面内での磁場Bは6mmで13.3%の減少でした。 分布の形から見ますと、磁場の場合、均一度がいまひとつのように感じます。もう少し、 磁極の幅を広くして均一度を高めた方が良かったかもしれません。ただ、電磁石のヨークの 直径は、装置の全体の配置からその大きさが制限されているかもしれませんので、 ヨークの直径を磁場の均一度だけの理由で大きくは出来ないかもしれません。また、 電子の加速電圧を何キロボルトにするかによって、磁極に巻くコイルの巻き数や線の太さ も変わりますから、これもヨークの直径を決めるもう一つのファクターになります。

電子を通すときの長手方向の磁場分布を見てみますと、中心部に対してフリンジ部で磁場が いったん増加してから減少に転じていることがわかります。磁場分布がこのような分布を 示すことは、コイルやヨークを含まない3Dソフトで磁場計算を行った場合には見ることの 出来なかったものであります。このようにいったん磁場が増える理由は、もちろん、コイルが 折り返すためにこの部分だけ電流が通る長さが長くなっているためですから、コイルを 考慮しないソフトウェアで現れてこないことは当然です。

磁場がこのような分布を取ることがわからなければこれに対する対策もとりようがありま せんが、有限要素法ソフトでコイルの影響を取り入れて計算すれば、このようにはっきりと コイル磁場の影響を取り入れることが出来、その対策も取れるかもしれないと言うことです。
Electric Field of Wien Filter A
Electrostatic Field in XY-plane of Wien Filter A
Electric Field of Wien Filter A
Electrostatic Field in XZ-plane of Wien Filter A
Aの場合はSb=Se=7mmでした。 電場Eは3mmで20.2%減少、2mmでは8.9%の減少でした。 電場分布の均一性はあまりよくありませんでした。120°の角度にわたって円弧は作ったわけですが、 上下方向にある磁極がアース電位の電極として作用していることが考慮されていません。 しかし、Z方向への分布は一様で、磁場の場合のようにフリンジの始まりでのゆるいピークはありません。 Z方向への分布が電場と磁場とで異なってしまったことは対策が必要です。ここでウィーン条件が 成立しなくなるからです。

次はWien Filterの応用I・スピン回転器


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