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Wien Filterの設計法とその応用
第1章・Wien Filterの設計と電場・磁場の計算
  ・ 第2章・Wien Filterの電極・磁極の形と電子の軌道
  ・ 第3章・いろいろなWien Filter
  ・ 第4章・Wien Filterの応用I・スピン回転器

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Electron Optics Solutions
ウィーンフィルタの電場・磁場の計算には三次元(3D)のソフトが必要です。電場の3D計算には たくさんのソフトがあり、いずれも精度の高い結果が得られますが、磁場に関しては、有限要素法 (FEM)を使えばコイルを含んだ系の計算、あるいは磁気飽和を考慮した計算ができますが、そのほかの方法では 他の原理に基づく方法ではいずれかまたは両方が出来ないことが多いようです。電磁石の全体を計算できずに、 ポールピース部分だけで磁場計算をしますと、電子の軌道計算などは、問題ないのですが、実際に 制作した装置で、計算よりもずっと多い励磁電流が必要になったりして戸惑うことがあります。 出来れば、磁場の計算は、FEMを使ってコイルもヨークも考慮して行いたいものです。そうは言っても、 値段との相談でとても手が出ないとお考えの方は Field Precisionと言うアメリカの会社で出しているソフトを見てみてください。このソフトは、Charged particle optics計算に 必要なソフトのうち、収差の計算以外のすべてのコンポーネントを含んで110万円くらいで買うことができます。 日本の代理店は、Advanced Science Laboratory, Inc. (ASL)と言います。 
WienFilterの3D表示
Wienフィルターの一例。

第2章・Wien Filterの形と電場・磁場の計算と電子の軌道

Wien Filterは、ExB (EクロスBと読みます)とも言われていますが、一様電場と一様磁場を直交 して加え、そのどちらにも直交する方向に荷電粒子ビーム(電子やイオン)を入れてやると、ある 速度のビームが直進するという光学機器です。この直進の条件は、E1=vB1と書かれます。E1は 一様電場、B1が一様磁場を表し、vは荷電粒子の速度です。これからは、荷電粒子と書かず、 電子と書きますが、イオンの場合にも成り立ちます。

図にWien Filterの一つの例を示しています。丸い筒に上下に四角い棒が付いています。 この二つの棒が磁極です。この磁極の両側に磁場を作るためのコイルが巻かれるのですが、 そのコイルは図には示されていません。コイルは別に下の方に示してあります。これを上の図の磁 極にはめるわけです。

左右にあるのが電極です。電場と磁場は直交して加えますから電場は横方向(X)、磁場は縦 方向(Y)に加えるわけです。どうしてこのような形にしているかと言いますと、電場も磁場 も一様場を加えなければならないわけですが、これが実は一筋縄ではいかないのです。 一様磁場は比較的簡単に作れます。磁極のギャップ長(S)に対してポールピースの幅(W)を 3倍程度に取れば一様磁場になります。電場も同じなのですが、電極は磁極の中に入れる 必要があります。
Coil for Wien
上のWien Filterの磁極にはめるコイル。
電場と磁場を重畳させてしかも両方を一様場にするということは実はWien Filterの100年の 歴史の中で必ずしも多くが成功しているとは言えない状況だったのです。Wien Filterは、 1897年にWienと言う人が発明したもので、電子やX-線の発見とほとんど同時期に発明された 古い装置なのですが、必ずしも順調な発展を遂げてきたわけではありませんでした。それは、 原理的な単純さの陰で幾多の困難な課題があったからだとも言えましょう。

それでは狭い磁場のギャップの中でどのようにして電場は一様場を作れば良いのでしょうか。 それには、同一円周状の多極子によってどのようにして一様場を作るかと言う電子線の偏向 場の作り方の課題で解決されていた方法を用いることができます。後で示しますが、多極子に いろいろな角度を持たせたり、いろいろな電圧を加えたりして、一様場や4極子場などを作る ことが出来ますが、一様場を作るには、電極を向い合せに120°これと直交する方向に向い合 せに60°の合計4極を作り、120°の側にプラスマイナスの電圧をかけ、60°の電極をアースに すれば一様場になります。これが上の図に示した電極なのです。

一様電場磁場

WIen電極メッシュ
Wien電極メッシュ
WIen電極メッシュ
Wien電極の作る一様電場のポテンシャル分布。
さて、これからウィーンフィルタの電場・磁場の計算をしてみます。 一様磁場に入った電子は回転運動をします。この時の回転半径をRmとしますと、Rmは、
Rm = mv / eB1
と表されます。一様電場の中で、電子は円運動ではなく、双曲線軌道になります。 しかし、電極を電子が円運動をするように曲げて配置することもできます。 Wienフィルタの内部で直進運動をさせようとして考えている場合には、電場によっ て無限大の回転半径を持つ円運動をさせると考えます。この時の電極は並行平板 になるわけです。回転半径は、
Re = mv^2 / eE1
となります。ところで、ニュートンの運動方程式による力と、電場によって働く力が 等しいと置くと、
mv^2 = eUo
となります。この式を使って、上の回転半径の式から、一様電場E1と一様磁場B1 が求められます。即ち、
E1 = 2Uo / Re
B1 = 2Uo / vRm
です。いま、電子を加速する時の電圧UoをUo=1000V、電子の回転半径Re=Rm=12mmとして、 一様電場E1は、
E1 = 2Uo/Re = 2*1000 / 0.025 = 80000V/m
と求められます。電極間距離SをS=12mmとしますと、並行平板電極を用いる場合には、 各電極に加える電圧V1は次のように求められます。
V1 = S*E1 / 2 = 0.012*80000 / 2 = 480 V
しかしながら左の図のような円周の内側で120°の角度で囲んだ場合には、同じ電圧で この1.1倍の電場が作られますので、1.1で割っておきます。
V1 = 480 / 1.1 = 436.4 V 
電子はプラスの極にひきつけられます。左側をプラス、右側をマイナスの電圧にします。 磁場を求めるには、まず電子の速度が必要です。速度を計算するには、電子のチャージeと 重さmを使います。
e = 1.602e-19 C, m = 9.109e-31 kg
速度vは、v = sqrt(2*eUo/m) = sqrt(2*1.602e-19*1000 / 9.109e-31) = 18755904m/s
となります。これを使って、一様磁場B1は、
B1=mv / eRm = 9.109e-31*18755904 / (0.025*1.602e-19) = 4.265e-3

と求まりました。それでは、このB1を作るためのアンペアターンは、CGS単位で NI = B1*S / 0.4*π= 42.65*1.2 / (0.4π) = 40.73 AT 
となります。

次は電場・磁場の計算と電子の軌道


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