図1. 電子を試料にぶつけた時に放出される電子のエネルギー分布の模式図。

図2.17種の物質に対する二次電子放出カーブ。最大電圧と放出係数で規格化。 西村賢治、大宅薫、光学モデルを用いた2次電子放出のモンテカルロシミュレーション。 沼津工業高等専門学校研究報告第37号、2003年1月。43。

図3. 二次電子のエネルギー分布とその角度依存性の模式図。

図4. 円盤試料に入射した10kVのビームから発生した二次電子の磁場中での電子軌道。 Xy面、XZ面、YZ面のそれぞれから見た軌道を示している。

目次 SEM(走査型電子顕微鏡)
1.SEM開発の歴史及び検出器
2.SEM用対物レンズ
3.SEM二次電子の発生
4.SEMの_ET検出器
5.低加速SEMのためのリターディング
6.電子銃や検出器とレンズの関係>
7.
永久磁石を使ったSEM
*********************************** 目次(全体)EOS津野の電子光学
1.最初のページ
2.レンズ設計
3.偏向と非点補正
4.走査電子顕微鏡SEM
5.光電子顕微鏡PEEM
6.エネルギー・アナライザ
7.Wien Filter
8.収差補正
9. スピン回転器
10.著者のページ

EOS津野
電子光学講座
電子の発生は、フィールドエミッションや熱電子放射、光電子放出などありますが、二次電子も試料に 電子がぶつかることによって改めて発生する電子ということではこれらのいろいろな電子放出と似た、 一つの電子放射の方法になります。これらのいろいろな電子放射の中でも、二次電子放射は、真空中の 電子を扱う分野の中の巨人でありました。テレビのブラウン管の存在によって多くの研究がなされました。 それともう一つ多くの研究が行われた分野として加速器が挙げられます。電子顕微鏡や、電子線分析装置は、 二次電子を利用はしてきましたが、それに携わる人の数が少なかったために、二次電子そのものの系統的 研究は少なかったように思います。しかし、他の分野で発展した理論を用いた二次電子軌道の計算ソフト がありますので、ここでは、その内容を少しお話し、電子顕微鏡などの場合に応用していきたいと思います。


二次電子の発生

固体に電子を入射したとき、表面から放出される電子が二次電子です。この時、入射電子と同じ電子が反射 してくる場合もあり、これを反射電子といいますが、二次電子と反射電子の区別がつくわけではありませんので、 便宜的に、50eVより低いエネルギーを持つ電子を二次電子と呼んでいます。図1には物質に電子を当てた時に試料 から放出される電子のエネルギー分布を模式的に示しています。この図の横軸はSEMなどの場合は2フルスケールが 数十キロボルトになりますので、ログスケールで描かれることになっています。二次電子を50eVで区切ったのは、 二次電子がそれだけの大きさのエネルギー幅で放出されるということではなく、便宜的に二次電子と反射電子の 呼び名を50eVで分けたということになります。50eV付近で両電子が混在しているとすれば、二次電子の シミュレーションだけで得られるエネルギーの分布はもっと狭いエネルギー範囲になってもおかしくないわけです。

ただ、実際にはこの図をSEMのいろいろな試料について測定した例は意外に少なく、この図のほとんどは、 他の分野で測定されたグラフになります。そして、その場合多くは、SEMに比べると低加速電圧での測定に なります。図2は、いろいろな試料について二次電子のエネルギー分布を測定し、最大のエネルギーを示す 電圧Emaxと、その時の二次電子放出係数δmで規格化して一つのグラフにまとめた結果を示しています。 この図に示しますように、少なくともEmaxの二倍付近の電圧まではカーブの形が物質に依存しないと言うことが 出来ます。そこで、このカーブをユニバーサルカーブとして式であらわし、二次電子のシミュレーション を行うときの放出電子を与えるのに、Emaxとδmから計算するという手法がとられます。

SEMで使われる15keVという高い加速電圧で、SiとAuについて二次電子のエネルギーと角度に対する依存性を 測定したのは東京大学の遠藤、井野先生たちでSurface Science 346(1996)40-48に、Energy and angular distribution of secondary electrons emitted from Si(111)-7x7, √3x√3-Ag and 5x2-Au surfacesと いう論文にまとめられています。この論文によれば、二次電子のエネルギー分布は、図1のような分布で あり、角度分布もCosθで表され、他の低加速電圧のもとで測定された場合と比べて特に大きな違いを 生じてはいないようです。

二次電子放出係数δmとδmを最大にする入射エネルギーの値Emaxを原子番Z号に対して取ると、Zに対して 周期的に変化するそうです。また、この二次電子放出係数は仕事関数とともに増加するそうですが、これは 仕事関数が電子の放出過程で表面障壁として作用するばかりでなく、固体中での二次電子の生成に関係して いると言われています。

さて、二次電子放出係数の最大値δmは、その垂直放射の場合の値δmoに角度依存性F(θ)をかけたものになります。
δm = δmo F(θ)  図3のグラフ参照。
この最大値を示す電圧Emは、これもその垂直放射の場合の値Emoに角度依存性F(θ)をかけて求めます。
Em = Emo F(θ)
ここで、SiとAuの値は
δmo = 1.1, 1.4
Em = 250.0, 800.0
であり、F(θ)は、
F(θ) = 1 / √(cos(θ))
と置かれます。二次電子放出係数の角度とエネルギー依存性は、
δ(θ, E) = δm [f*exp^(1-f) ]^a
f = E / Em
a = 0.62 for f < 1, 0.25 f>=1
二次電子の発生率
n( E) ~√(E) exp(- E/ 2E )   
ここで Ep = 2.0 eV.

のようにして求められます。

図4には、このようにして金の円盤試料に垂直に入射した10kVのビームから発生した二次電子 の磁場中での軌道をシミュレーションしたもので、Xy, Xz, YZの3津野面について示しています。 磁場中で電子はサイクロトロン運動をしながら上昇しているものもあり、そうでないものもあります。 磁場の方向に対して大きな角度を持って出てきたビームは、磁場中でサイクロトロン運動をしますが、 ほぼ磁場に平行に出てきた二次電子はそのまま上がっていきます。

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作成日 2012/02/02  改定 2018/05/19