目次

1.FromGodHand
2.SEMの対物レンズ1
3. .SEMの対物レンズ2
4. .二次電子の発生と軌道
5.SEMの二次電子軌道計算1
6. 平行ビームの生成
7 . 走査型電子顕微鏡用対物レンズ
8. SEMレンズと電子銃の関係
9. 低加速SEMのためのリターディング
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11. 著者のページ
EOS津野
電子光学講座
SEMの電子光学系の設計は、レンズの設計だけでは済みません。二次電子検出器、反射電子検出器に それぞれの電子がうまく入ってくれるかどうかを調べなければなりません。これまでは、試料から 電子を適当な電圧と適当な角度で飛び出させてその軌道を解析していました。もちろんこれでも 良いのですが、何か本当らしさに欠けるといいますか、わざとらしさがあって、本当にこれでいいのかと 心配が残りました。前のページに示しましたように、二次電子発生の計算ができるようになりますと、 この心配がなくなります。発生した二次電子が少しだけ進んだところまでをまず計算しておき、 その時の最終値のデーターを保存しておけば、次にレンズ場を計算し、検出器の作る電場分布も計算し、 両者の電場・磁場の中での電子軌道を計算すれば、発生した二次電子がどのようにして検出器に届くのかを 全行程として計算できることになります。エネルギーアナライザにつなげればエネルギー分布の測定が うまくできるかも計算できます。ちょっと難しいのは、長さの単位です。最初、二次電子の発生を 計算するときには、nm、せいぜいでミクロン単位になります。さころが、レンズや検出器のディメンジョンは どうしてもミリミートル単位になりますから、データーを引き継いで計算させるためには、結局全体を ミリメートル単位で入力する必要があるかもしれません。


コンベンショナルレンズとエバハート・ソーンリー検出器の二次電子軌道

前頁に示したようにして、試料から二次電子が発生して、真空中に出ていく様子をシミュレーションできる ことがわかりました。さっそく、このデーターを使って、試料から出た二次電子が検出器に入っていく様子を シミュレーションしてみることにしましょう。図1は、前のページにも示した試料に入る一次ビームの軌道 (これは、左から右の直線です。)今試料は右端にあり、電子ビームは左から右に向かっています。一次ビームの 加速電圧は10kVと高いので、エバハート・ソーンリー型検出器の作る電場が試料近傍に達しているとしても その軌道を曲げるほどには強くありません。試料に達した電子は、二次電子を発生します。発生する二次電子の 電圧と、向きはランダムに決まります。そして、一次ビームに対して一対一で出てくるわけではなく、二次電子 発生の効率、δに従った戸数が発生します。加速電圧が高い時は、二次電子の発生効率は低くなりますので、 たいていは一次ビームの電子の数より、二次電子の数は少なくなります。ただ、試料に使う物質によっては、 このδが2などの値を持つものもあり、その場合には、加速電圧が高くても、一次ビームとほぼ同じ個数の 二次電子を発生します図1の場合には、二次電子の軌道は試料から、1mm離れた位置でわずかに傾いているの側がります。検出器の 電場によって、加速電圧の弱い二次電子は加速されつつ、その軌道を検出器の方に曲げます。

図2は、エバハート・ソーンリーデテクターの形状を示しています。先端部分はシンチレーターといって、電子の 検出場所です。ここには高い電圧を加えることで二次電子を加速するとともに、検出器に電子を引き寄せる働き をします。検出器は電子が当たると光を発する、いわゆる光電面になっています。この光は、ファイバープレートで フォトマルチプライヤーに伝送されます。フォトマルチプライヤーは、二次電子作成の応用の一つになるわけですが、 伝達された光を今度は光電変換を行って再び電子に変えて、これを増幅します。増幅の方法として、二次電子を 使っているわけです。つまり、δが2以上となる物質を使って最大の放射率となる電圧を選んで電子をターゲット金属に 衝突させてやれば、入射した電子の数より多い電子が発生します。これを何度も何度も繰り返すことができるように ターゲットの金属を配置しておきますと、電子の数はネズミ算式に増えていくわけです。二次電子の検出に 二次電子を使うという面白い検出器になります。

エバハートとソーンリーはどちらも、イギリスはケンブリッジ大学の学生で、SEMの普及型の装置を初めて開発した サー・チャールス・オートレーのお弟子さんたちです。戦後間もないころのことです。SEMは、その後大きく発展 しましたが、いまだに変わらない唯一のものがこの検出器だと言えましょう。そのおかげで、この二人の名前は 先生のオートレーの名前を知らない人でもみんな知っている名前として今に残っています。

図3は、対物レンズです。コンベンショナル型の対物レンズは、レンズの外に磁場を漏らさないので、当面は 二次電子の検出に影響を与えません。しかし、一応その磁場を計算し、一次ビームを試料上にフォーカスする 電流を求め、その値の磁場を加えた時に二次電子の軌道に影響が出るかどうかを見積もります。このように、 検出器の電場とレンズの磁場のもとで先ほど計算した試料から出たばかりの二次電子の続きの軌道を 計算します。図4がこの軌道で、二次電子はレンズのポールピースに接触することもなく、検出器に入っています。 図5はその拡大図ですが、特に変わった挙動は示していません。

二次電子軌道の計算はこのようにかなりややこしい手順を必要とします。レンズ計算のように軸対称な計算でもなく、 アナライザと同様に3次元の計算になります。しかも、電場と磁場が両方関係してきます。電子の加速電圧は、 一次ビームで大きく、二次ビームではわずか数ボルトとなります。メインの場と漏れの場の両方が影響を及ぼして 来ます。

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作成日 2012/02/02

図1. 試料から放出された電子の軌道。エバハートけソーンリー検出器の電場が少しだけ試料付近に及んでいる。 対物レンズは、コンベンショナル型を使っているので、漏えい磁場の影響はない。
図2. Everhart-Thornley detector。
図3. SEMのコンベンショナル対物レンズの断面とコイル。
図4. エバハート・ソーンリー型検出器の作る8kVの電圧に惹かれて、二次電子が吸い込まれる様子のシミュレーション。
図5. 二次電子軌道の拡大図。